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第102号

平成塾月例業務支援講座 「漢方講座」報告

一般社団法人昭薬同窓会・平成塾月例業務支援講座報告
(一社)昭薬同窓会学術担当理事 松浦 功文(D−22B 昭和49年卒)

平成塾月例業務支援講座 「漢方講座」報告

場所 昭薬会館5階会議室
時間 13:00~16:00

・第1回「漢方製剤による更年期障害の治療」 平成23年9月25日(日)
・第2回「漢方製剤によるメタボリックシンドロームの治療」 平成23年10月30日(日)
・第3回「漢方製剤によるかぜ症候群の治療」 平成23年11月27日(日)

講師は武蔵野大学薬学部薬学科生薬療法研究室教授油田正樹氏(D−17A 昭和44年卒)による講演であった。かねてより漢方製剤による薬物治療の実務講座の希望が多く、ようやく3回シリーズで開講の運びとなった。毎回先生は、資料作成に努力され、ビデオも映写し、充実した内容であった。

第1回目は漢方の基礎知識について解説された。漢方の歴史、漢方医学、漢方医学と中医学について、東西医学の相違点、陰陽虚実、虚証と実証、寒熱、傷寒論の病期と表裏、六病位、内因性の病理観、気・血・水漢方医学の診断法の望・聞・問・切の四診について興味深く説明された。次に更年期障害の漢方治療について解説された。女性と漢方という名目で、女性特有愁訴と女性ホルモンについて、血の道について、冷え・瘀血・気滞・血虚の症状と診断基準を示され、特徴、予後および治療、成因について述べられた。主訴と症状、更年期障害の要因について気・血・水の関係を示され、漢方薬の三大処方例を解説された。めまい、顔色が悪いときは当帰芍薬散、不眠、イライラには加味逍遥散、頭痛のぼせに桂枝茯苓丸である。相対的な位置付けとして実証で熱証は桂枝茯苓丸、虚証で熱証が加味逍遥散、実証で虚証が当帰芍薬散である。女優さんを写真で示し、適応タイプを見事に表現し、面白かった。

当帰芍薬散は瘀血水滞に、桂枝茯苓丸は瘀血に、加味逍遥散は肝気うっ結証に用いる。

ほてりはエストロゲンレベルの低下とゴナンドトロピンの増加により自律神経機能の変調によるものとされている。桂枝茯苓丸はカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)の血管弛緩反応の亢進を改善し、ほてりの症状を改善することが実証されている。血の道は西洋医学とは違う切り口で発想としても為になる講演であった。

第2回はメタボリックシンドロームおよび漢方製剤および生薬のメタボリックシンドロームに対する薬理作用について解説された。近年食の欧米化、運動量の低下により、肥満・、インスリン低抗性、高血圧、脂質異常、高血糖を併発し、脳梗塞や心筋梗塞などの致死的病態を作っている。

黄帝内経の健康の意味について説明し、貝原益軒の養生訓−治未病−を紹介された。肥満の治療法には、運動・食事療法があるが、補助的に薬物療法を用いる。虚証と実証について詳しく説明された。

肥満の処方として実証では防風通聖散、大柴胡湯を用いる。虚証として防已黄耆湯(皮下脂肪型肥満)に用いられる。

防風通聖散は体内に蓄積した老廃物を排除し、肥満肥り、中年肥り、体毒を発散排泄させる。中風を防ぐ聖人に通じる処方として名づけられた。

高血圧には釣藤散、黄廉解毒湯が用いられる。釣藤散は高血圧で中等か痩せ型で脳血管障害の後遺症に用いられる。黄連解毒湯はわりあいに体力があり、赤ら顔、のぼせ、出血傾向、イライラ感のある人に用いる。

釣藤散は脳血流維持作用が実証されている。糖尿病には八味地黄丸と牛車腎気丸が用いられる。

八味地黄丸は補腎剤として胃腸は弱くなく、下腹部中央が軟弱で排尿障害に用いる。牛車腎気丸は八味地黄丸+牛膝、車前子で利水や疼痛緩和でかすみ目、疲れ目、腰痛、四肢の冷え、しびれ、脱力感に用いる。糖尿病性神経障害の自覚改善が実証されている。

第3回目は急性熱性疾患(傷寒)についての講演であった。基礎知識として中国三大古典、黄帝内経、神農本草経、傷寒雑病論の説明があり、張仲景の編さんした傷寒雑病論の中の急性熱性疾患(傷寒論)について学んだ。病期は陽病期と陰病期があり、太陽病気は解表発表され表証となる。少陽病期は清熱和解し、半表半裏証となる。陽明病期は瀉下し裏(熱)証となる。陰病期は温裏となり裏(寒)証となる。これは太陰病期、少陰病期、ちん陰病期と移行する。インフルエンザなどほとんどの感染症は身体の表面から侵入し、身体の深部に及んでいく、というものである。

急性熱性疾患(風邪)の漢方処方としては、ひきはじめのかぜに葛根湯、鼻水・鼻炎に小青竜湯、お腹の風邪に柴胡桂枝湯、鼻づまり・慢性鼻炎に葛根湯加川弓辛夷、悪寒・発熱・ふしぶしの痛みに麻黄湯、たんの切れにくい咳に麦門冬湯、のどのはれ・痛みに桔梗湯が用いられる。用法・用量としては食前に水またはお湯で服用する。成人1包(2.5g)、7~15歳2/3包、4~7歳1/2包、2~4歳1/3包、2歳未満は服用しない。

三陰三陽と漢方治療の基本として太陽病は発病初期で抵抗性が発揮される時期で、虚証では桂枝湯、実証では麻黄湯、葛根湯の適応となる。身体を温め発汗させて治療する。少陽病は胸部および上部消化管に症状が表れる。小柴胡湯や柴胡桂枝湯などの柴胡剤の適応となる。陽明病は内臓諸器官の異常として表れる時期で発汗を伴う場合は、白虎湯や白虎加人参湯などの清熱剤の適応となる。便秘・腹満感・精神不穏の症状の場合は承気湯類などの瀉下剤の適応となる。太陰病は抵抗力の低下で三陰へと移行し、慢性化の傾向を示す。

裏寒虚証の病態を示す。胃腸系の症状を呈するこの時期は、桂枝加芍薬湯、人参湯、大建中湯、小建中湯などの適応となる。少陰病は表寒証あるいは裏寒証の病態を示す。表寒証の場合は、附子湯や麻黄附子細辛湯の適応となる。裏寒証の場合は腹痛・心煩・下痢・便秘などの症状が出、尿量の減少はなく、虚脱状態が見られる。真武湯や四逆湯の適応となる。厥陰病はショックともだえ苦しむ状態であり、重篤な病態を示す。上熱、下寒の状態を示す。傷寒論は感染症の症状にピッタリと当てはまり、的を射た論であると感じた。

インフルエンザが流行る時期なので、妊娠中の女性には今年は麻黄湯が流行っているとマスコミで報じている。

3回の漢方講座を受けてみて、見かたを変えれば、東洋医学の新鮮さを改めて感じた次第である。

丁寧な説明の講演会であった。資料を希望される方は昭薬同窓会へお問い合わせください。

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