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第102号

平成塾第5回スクーリング報告

一般社団法人昭薬同窓会・平成塾第5回スクーリング報告
(一社)昭薬同窓会学術担当理事 松浦 功文(D−22B 昭和49年卒)

日時 平成23年8月28日(日)
場所 町田市文化交流センター

・午前の部(10:30~12:00)
 消化性潰瘍治療薬の臨床薬理について
 明治薬科大学医薬品評価学教授、渡邉 誠氏(D−23A 昭和50年卒)

・午後の部(13:00~15:00)
 潰瘍治療の流れと残された課題−H.pyloriから NSAIDの時代へ−
 北里大学医学部消化器内科学准教授・北里大学東病院消化器内科副院長 田辺 聡氏

明治薬科大学医薬品評価学教授、渡邉 誠氏(D−23A 昭和50年卒)
渡邉 誠氏

午前の講演では臨床薬理とは
・創薬と育薬のための臨床試験
・個々の患者さんを対象にした合理的薬物投与計画法とそのために役立つ臨床薬物動態学
・患者さんと医療者との「治療の良きパートナーシップと信頼関係」
の形成について述べられた。

消化性潰瘍とは攻撃因子(酸、ペプシン)、粘膜防御因子(血流、粘液分泌、HCO3−分泌、上皮再構築)のバランス関係であり、H.pylori NSAIDS、喫煙、ストレスが双方に関与していること、攻撃因子に働きかける治療薬としてH2受容体拮抗薬、プロトンポンプ阻害薬、ムスカリン受容体拮抗薬、制酸剤、抗ペプシン薬がある。粘膜防御因子は体液性(プロスタグランジン)神経性(カプサイシン感受性知覚神経)に働きかける治療薬として、胃粘膜保護剤、胃腸運動調節剤について説明された。消化性潰瘍の症状、疫学、予後、治療薬について消化性潰瘍診療ガイドライに基づき、詳しく解説された。また、消化性潰瘍の原因として胃酸分泌にピロリ菌とNSAIDが深くかかわっていることを示された。

胃壁細胞における酸分泌機構について解説され、プロトンポンプ阻害剤(PPI)の意義について述べられた。

ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌について一次除菌(PPI、アモキシシリン、クラリスロマイシン)二次除菌(PPI、アモキシシリン、メトロニダゾール)について解説され、最後に内視鏡検査機器の最近の進歩としてカプセル内視鏡、経鼻内視鏡を紹介され、ピロリ菌の検査方法として尿素呼気試験について述べられた。また、PPIが逆流性食道炎と胃食道逆流症の適応拡大になったことは、意義あることである。

北里大学医学部消化器内科学准教授・北里大学東病院消化器内科副院長 田辺 聡氏
田辺 聡氏

午後の講演では1.消化性潰瘍とは、2.H.Pyloriと除菌療法について、3.消化性潰瘍治療の歴史と現状、4.消化性潰瘍の今後について解説された。病理として好発部位として腺境界の塩酸分泌遠位および胃運動ひずみの著しい部位に発生する
と強調された。酸分泌としては、十二指腸潰瘍は高酸で空腹時の痛み、胃潰瘍は高酸であるが上の方に発生する潰瘍は低酸である。

消化性潰瘍の成因について述べられた。自覚症状について心窩部痛、空腹時痛、食事摂取改善、季節の変わり目、胸やけ、げっぷ呑酸、吐き気、食欲不振、体重減少、吐血、下血である。胃潰瘍の診断と病期について写真を使い説明された。

H.Pyloriの除菌療法について解説された。H.Pyloriのウシアーゼ活性について、胃内の尿素を分解しアンモニアを産生し胃酸を中和することにより、潰瘍を発生させる。胃潰瘍では70%、十二指腸潰瘍では90%以上が原因である。更に経過すると萎縮性胃炎から胃がんに発展する。

H.Pyloriの除菌治療に胃MALTリンパ腫、早期胃がんに対する内視鏡的治療後胃、特発性血小板減少性紫斑病が加わった。

ピロリ菌の一次除菌(クラリスロマイシン、アモキシシリン+PPI)1日2回朝夕、1週間服用で除菌率は70~90%である。

二次除菌(メトロニダゾール、アモキシシリン+PPI)では除菌率は90%以上である。除菌の副作用として味覚異常、腹痛、下痢、軟便が10~20%ある。メトロニダゾールについては、相互作用としてアルコールでジスルフィラム作用、ワルファリンの抗凝固作用を増強するので注意が必要である。消化性潰瘍の今後の課題として、
・NSAIDあるいは低用量アスピリンなど薬剤性潰瘍の増加、
・難治性潰瘍の存在、
・三次除菌の開発を指摘された。

北里大学による抗血栓療法中あるいはNSAIS内服例における上部消化管出血(54例/95例 57%)であり、胃薬なし55%、粘膜防御系薬剤28%、H2RA13%、PPI 4%服用というデータが出たとのことである。

三次除菌の実際はケースバイケースでレジメンは決まっていない。除菌率は98%となり適応患者は少数である。例えばランソプラゾール40分2+レボフロキサシン400mg分2+アモキシシリン1500mg分2 10日間服用または高用量PPI+アモキシシリン+ビスマス製剤などである。実際の臨床映像を多く取り入れ興味ある講演であった。

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