昭薬ミニミニクイズの解答
ミニミニクイズ 富士登山を夢見る旦那さん
旦那さんと妻のツマ子さんが富士登山について話をしています。
旦那さんは世界遺産に登録された富士山の山頂に登るのが夢で、今度友人達と一緒に登山する計画を立てています。
旦那さん:「東京オリンピックも楽しみだけれど、世界遺産に登録された富士山に登るのもいいだろう。早く素晴らしい景色がみたいなあ。」
ツマ子さん:「あなたは、だいぶん前から登りたいと話していたわね。でも、ちょっと心配な事があるのだけれど。」
旦那さん:「無理な行程を組まなければ大丈夫だから心配しなくていいよ。」
ツマ子さん:「私が心配しているのは高山病の事です。高地に慣れていない人が山登り等をするとかかり易いのでしょう。あなたは大丈夫かしら?」
旦那さん:「実は僕も高山病が気になって、この間、掛かりつけの内科の先生に聞いてみたんだよ。そうしたら、今僕の飲んでいる薬が高山病の治療に役立つ事もあると言われたよ。でも一般的に役立つ薬も出してくれるように頼んだよ。」
ツマ子さん:「そうしたお薬を持っていれば少しは安心できるわね。何とかいうお薬が高山病の予防にいいときいたこともあるけど、あなたのお薬とは名前が違っていたみたいよ。」
旦那さんの処方
アダラートCR錠20mg 1錠 1日1回 朝服用
ブロプレス錠4mg 1錠 1日1回 朝服用
クレストール錠2.5mg 1錠 1日1回 朝服用
クイズ1
一般的に高山病の予防に役立つとされるお薬は以下のどれですか?
1.ラシックス
2.フルイトラン
3.ダイアモックス
クイズ2
高山病の治療に役立つとされる降圧薬は以下のどれですか?
1.アダラートCR
2.ブロプレス
3.クレストール
文献:月刊薬事4(9)105-110(2012年)
TOPIC SDIC Q&A版 No135(2013年10月)
解答 クイズ1=3 クイズ2=1
解説:高山病とは高地に急速に到達した時に、呼吸循環系の順応が上手く行われない為に、頭痛や吐き気、めまい等の症状が出現する疾患である。
高山病の多様な症状は気圧低下による内臓の腫れと酸素不足が原因で起こると考えられている。又、登山による疲労、脱水、寒冷なども発症に関与しているとされている。
高山病は標高2500mを超えると発症率が高まると考えられており1500~2500mの高度での発症も増加している。
年齢と共に低酸素状態への身体適応は低下する為、80歳以上の高齢者では1500mでも発症する可能性がある。
高山病は山酔い(AMS)、高地(高所)脳浮腫(HACE)、高地(高所)肺水腫(HAPE)の3病型に分類される。
その中では一番軽症の山酔いが発症率の殆どを占めている。しかし高地脳浮腫、高地肺水腫は非常に危険度が高く特に注意しなければならない。
高山病の予防にはなるべく時間をかけてゆっくり高度を上げていく事が重要である。
予防薬として炭酸脱水酵素阻害剤のアセトゾラミド(ダイアモックス)が推奨されている。アセトゾラミドは脳血管を拡張して脳血流を増加し、脳の低酸素状態を改善すると同時に呼吸中枢を刺激し、呼吸回数を増加し、結果的に血中酸素濃度を増加させる。
アセトゾラミドがアレルギー等で服用出来ない場合はデキサメタゾン(デカドロン)を使用する。
又、アセトゾラミド、デキタメサゾンは高山病の治療にも役立つ薬剤である。
一方、旦那さんの処方薬の1つのニフェジピン(アダラート等)は山酔い等の予防や治療には効果はなく、高地肺水腫(HAPE)の緊急対処薬である。
肺動脈圧を下降させ、HAPEを改善する効果があるとされている。
しかしこれらの薬剤は高山病に対しての保険適応を持ってはいない。
高山病が発生したら速やかな下山が何よりも有効である。
※AMSの予防例
1.アセトゾラミド1回125mg1日2回(高所到着前日から到着3日後迄 4日間)
2.デキサメタゾン1回4mg 12時間毎投与
※治療例
AMS
1.アセトラミド 1回250mg 1日2回
2.デキメタゾン 1回4mg 6時間毎
HACE
1.デキサメタゾン 1回8mg、以降6時間毎に1回4mg追加
HAPE
1.ニフェジピン 1回20mg 1日1~2回、 12時間毎
(又は、1回10mg 8時間毎)
2.デキサメタゾン 1回4mg 6時間毎