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2011年 第5回テキスト「肝臓の機能と病気II」

はじめに

今回の、肝臓の機能と病気II(後半)では、その他の肝疾患という名目で治療薬の選び方と使い方を解説する。肝硬変は、腹水・浮腫・肝性脳症の治療について、また肝癌については、全身・動注化学療法について解説する。

これらの原因としては、肝炎ウイルス、アルコール、自己免疫性、胆汁うっ滞や代謝性などがある。また最近では、生活習慣病として取り上げられているメタボリックシンドローム起因による非アルコール性脂肪肝が増加している。以前は、アルコール多飲によるアルコール性脂肪肝が主流であったが、肥満や糖尿病、高コレステロール血症などと関連して、肝臓に脂肪が蓄積することにより起こるようになった。もともと日本人には多い病気ではなかったが、食生活の欧米化や肥満の増加に伴い、頻度は成人で10~25%に及ぶと言われている。今後食事療法、運動療法とともに薬物療法の確立が注目される。

また、免疫性疾患として、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変について解説する。薬物性肝障害については、我々薬剤師が患者さんと接する服薬指導の中で見つけやすい。専門職としての役割を発揮できる分野である。肝臓は代謝にかかわる臓器のため、薬剤による障害を受けやすく、ほとんどの薬剤で副作用を発現する可能性がある。早期に発見し、中止対応すれば回復するため定期的な検査や初期症状の観察が重要である。初期症状としては、発熱、発疹、かゆみ、食欲不振、嘔気、嘔吐、下痢、全身倦怠感、皮膚や白目の黄染、褐色尿などである。このような症状が現れた場合、主治医に受診するよう指導することである。薬物性肝障害については、病態により肝炎型、胆汁うっ滞型、混合型の3型に分類される。肝炎型はALTの高値、胆汁うっ滞型はALPの高値である。発症機序によって、中毒性とアレルギー性に分類される。中毒性は投与量に依存し、長期の服薬により発症する場合がある。アレルギー性は再投与の際に早期に発症する場合がある。また、肝障害の原因は医薬品のみならず、あらゆる2ものを考慮すべきである。健康食品、染毛剤なども一例である。二回に亘り肝臓疾患について解説した。肝臓はなくてはならない臓器であることを肝に銘じるべきである。また患者さんとの人間関係においても、肝胆相照らす間になりたいものである。

2011年9月1日
松浦 功文

【目次】

  • I 肝硬変   4
    • 1.腹水、浮腫の治療   4
    • 2.肝性脳症の治療   5
  • II 肝細胞癌   9
    • 1.全身化学療法   10
    • 2.動注化学療法   11
  • III 脂肪肝・非アルコール性脂肪性肝炎   13
  • IV 自己免疫性肝炎   17
  • V 原発性胆汁性肝硬変   21
  • VI 薬物性肝障害   24
  • VII 薬剤編II   27
    • 1.肝不全治療薬   27
    • 2.抗悪性腫瘍薬   30
    • (a)分子標的治療薬   30
    • (b)プラチナ製剤   32
  • VIII 参考文献   33
  • IX 復習問題   34
  • X 索引   39

索引

【0~9】、【A~Z】

  • AIH(自己免疫性肝炎)  17~21
  • AIHの診断指針   17
  • ARB(アンギオテンシンII1型受容体拮抗薬)  14
  • Child-Pugh分類(肝予備能重症度分類)  9~11
  • DLST(薬物リンパ球刺激試験)  24 , 25
  • EPL(ポリエンホスファチジルコリン)  15 , 16 , 18
  • HMG-CoA還元酵素阻害剤   14
  • NASH(非アルコール性脂肪肝炎)  13 , 15 , 18
  • NAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)  13 , 14
  • PBC(原発性胆汁性肝硬変)  21~24
  • TACE(動脈化学塞栓療法)  9
  • UDCA(ウルソデオキシコール酸)   14 , 16 , 18 , 20 , 21 , 23 , 27
  • YAM値(若年者骨密度値)  20
  • 5FU(5-フルオロウラシル)  12

【あ行】

  • アザチオプリン   18
  • アルブミン製剤   5 , 7
  • アルコール性肝硬変   13
  • アンギオテンシンII1型受容体拮抗薬(ARB)  14
  • インスリン抵抗性改善薬   14
  • 茵蔯蒿湯   22
  • ウルソデオキシコール酸(UDCA)   14 , 16 , 18 , 20 , 21 , 23 , 27

【か行】

  • 活性型ビタミンD3製剤   21
  • 肝性脳症   4 , 5 , 7 , 8
  • 合併症のない症例   14
  • カナマイシン   28 , 29
  • 肝癌   9~13
  • 肝硬変   7 , 21~24
  • 肝細胞癌   9~11 , 30 , 32
  • 肝性昏睡   6 , 8
  • 肝性脳症用アミノ酸輸液   7 , 8
  • 肝動注化学療法   9 , 11 , 12
  • 肝動脈化学塞栓療法(TACE)  9
  • 肝庇護療法   14
  • 肝不全用アミノ酸注射剤   28 , 29
  • 肝不全治療薬   27~30
  • 肝不全経口栄養剤   28
  • 肝予備能   9 , 10
  • 肝予備能重症度分類(Child-Pugh分類)  9~11
  • 急性肝不全   27~29
  • 急性腎不全   6
  • 局所壊死療法(ラジオ波)  9
  • グリチルリチン製剤   18 , 27
  • 劇症肝炎   26
  • 血漿交換療法   19
  • 血清アルブミン値   5 , 11
  • 血清トランスアミラーゼ値   17 , 18
  • 原発性胆汁性肝硬変(PBC)  21~24
  • 抗悪性腫瘍薬   30~33
  • 高アンモニア血症   29
  • 高血圧合併症例   14
  • 抗酸化療法   14
  • 高脂血症合併症例   13
  • 骨粗しょう症   19~22
  • 骨吸収抑制剤   21
  • 骨形成促進剤   21

【さ行】

  • 自己免疫性肝炎(AIH)  17
  • 自己免疫性疾患   21
  • シクロスポリン   18
  • シスプラチン   12 , 13
  • 脂肪肝   13 , 15
  • 瀉血療法   14
  • 新鮮凍結人血漿   28 , 29
  • ステロイド大量パルス療法   19
  • 生体の異常反応   24
  • 全身化学療法   10
  • ソラフェニブ   9 , 10 , 12

【た行】

  • 大規模臨床試験   10
  • 代償性肝硬変   4
  • 多発性肝細胞癌   10 , 11
  • チアゾリジン誘導体   13~15
  • 中毒性肝障害   24
  • チロシンキナーゼ阻害剤   31
  • 手足皮膚反応   10
  • 低アルブミン血症   6
  • 糖尿病合併症例   13~15 , 30
  • 動脈化学塞栓療法(TACE)  9
  • 特異体質性肝障害   24

【な行】

  • ネクサバール   10 , 30
  • 難吸収性抗生物質   5
  • 難消化性二糖類   5

【は行】

  • 非アルコール性脂肪肝   4 , 13 , 24
  • ビグアナイド系   14
  • 非代償期肝硬変   27 , 29
  • ビタミンK2   19 , 20
  • 腹腔大動脈シャント頸静脈的肝内門脈静脈短絡術   5
  • 腹水   4 , 5 , 10
  • 腹水穿刺   5
  • 腹水ろ過濃縮再静注法   5
  • 浮腫   4 , 5
  • 分岐鎖アミノ酸製剤   4~7 , 15 , 27~30
  • 分子標的治療薬   9 , 30~32
  • プラチナ製剤   32 , 33
  • プレドニゾロン製剤   17~20 , 28
  • プロトロンビン時間   26 , 31
  • プロトロンビン値   18 , 19
  • ベサフィブラート   21 , 22 , 24
  • ポリエンホスファチジルコリン(EPL)  15~16 , 18

【ま行】

  • 慢性肝不全   27~29
  • 免疫抑制療法   17
  • 門脈圧亢進症   6

【や行】

  • 薬物性肝障害   24~27
  • 薬物リンパ球刺激試験(DLST)  24

【ら行】

  • ラクツロース   8 , 28~30
  • ループ利尿剤   5 , 6

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