2011年 第4回テキスト「肝臓の機能と病気I」
はじめに
今回は、肝臓の機能と病気で前半Iは、肝炎の中で急性肝炎、急性肝不全、ウイルス性肝炎であるB型慢性肝炎、C型慢性肝炎を中心に治療薬の選び方と使い方を解説する。肝臓は予備能力が大きく、再生能力が高く2/3を切除しても元の大きさに戻る。沈黙の臓器と言われ、普段は気にかけないが、「肝腎要」の肝である。栄養素であるアミノ酸・糖類・ビタミン等を蓄え、必要に応じて、エネルギー源に作り換え体内に送り出したり、老廃物や薬剤などの体に有害な物質を分解して無毒化する。また、栄養の消化や吸収に必要な胆汁を合成する。
さて、過去に受けた輸血、血液製剤の投与により薬害エイズやC型慢性肝炎に感染し、国や企業が指弾されたのも記憶に新しい。また感染者の中には幼小児期に受けた不衛生な注射器や針で感染源が特定できない場合もある。この様な経緯で、H15年特定生物由来製品や生物由来製品に関して、薬事法68条9、規則第62条10で生物由来製品については、製造業者等は●譲り受け賃借した者の氏名、住所●生物由来製品の名称、製造番号●数量●年月日●使用期限●その他必要事項を記録し20年間記録保管することになり法整備され、現在は副作用情報については製造番号による遡及調査がなされるようになった。
この様な苦い経験の中、慢性肝炎、特にウイルス性肝炎の治療法は進歩した。インターフェロン、核酸アナログ製剤、ペグインターフェロンなどの薬剤も出回り、併用療法、遺伝子型による対象患者の選択といった使用法も充実し、ウイルス学的著効の得られる率は向上してきた。しかし新たに出現した薬剤耐性ウイルスの問題がある。ウイルス性慢性肝炎は肝硬変、肝癌の道をたどるが、寛解が期待できる疾患となったので新しい治療法を期待しながら、全ての国民が肝炎ウイルス検査や正しい知識の普及に取り組むべきである。
2011年7月15日
松浦 功文
【目次】
- I 総論 3
- II 構造とはたらき
- 1.肝臓の構造 3
- 2.肝臓のはたらき 4
- III 肝臓の疾患 肝炎
- 1.急性肝炎 5
- 2.急性肝不全(劇症肝炎) 7
- 3.慢性肝炎 14
- (a)B型慢性肝炎 15
- (b)C型慢性肝炎 18
- IV 薬剤編
- 1.インターフェロン製剤 24
- 2.C型慢性肝炎に対する抗ウイルス薬 27
- 3.B型慢性肝炎、肝硬変の抗ウイルス薬 29
- 4.肝機能改善薬 31
- V 参考文献 35
- VI 復習問題 36
- VII 索引 40
索引
【0~9】、【A~Z】
- B型急性肝炎 7
- B型慢性肝炎 15 , 29
- C型慢性肝炎 18
- DIC対策 9 , 13
- HCV-RNA 20 , 21
- ICU管理 11 , 12
- UDCA 31~34
【あ行】
- アデホビルピボキシル(ヘプセラ®) 18 , 29 , 30
- アミノ酸配合液 11 , 12
- α型インターフェロン 26
- インターフェロン製剤 24
- ウルソデオキシコール酸(UDCA) 31~34
- エンドトキシン吸着療法 10
- エンテカビル(バラクルード®) 17 , 29 , 30
【か行】
- 肝炎の種類 5
- 肝機能改善薬(肝疵護薬) 31
- 肝癌 18 , 21
- 肝硬変 18 , 21 , 29
- 肝性脳症の5段階 9
- 間質性肺炎 23 , 34
- 肝臓の構造 3 , 4
- 肝不全用アミノ酸製剤 6 , 10 , 13
- 肝臓のはたらき 4
- 急性肝炎 5
- 急性肝不全 8
- グリチルリチン製剤 11 , 31~34
- 血液濾過透析 10 , 11
- 劇症肝炎 8 , 11
- 血漿交換 10 , 11
- 原発性硬化性胆管炎(PSC) 32
- 原発性胆汁性肝硬変(PBC) 3 , 32
- 高アンモニア血症 11
- 抗ウイルス薬 29
【さ行】
- ジェノタイプとセロタイプ 21
- 自己免疫性肝炎(AIH) 3 , 32
- 術後肝不全 8
- 小柴胡湯 34
- 重症型アルコール性肝炎 8 , 13 , 14
- 生体肝移植 10 , 11 , 12 , 14
- セロコンバージョン 16
【た行】
- 代償期肝硬変 23
【は行】
- バラクルード® 17 , 29 , 30
- β型インターフェロン 23 , 24
- プロトロンビン値 9 , 12
- ヘプセラ® 18 , 30
- ペグインターフェロン 19 , 22
【や行】
- 薬剤耐性ウイルス 18
【ら行】
- ラミブジン 16 , 29
- ラクツロース製剤 11
- ランソプラゾール(タケプロン®) 11~14
- リバビリン 22 , 27 , 28