2023年度 シリーズ1 まず習得したい！腎臓・尿路疾患の病態生理と薬物療法

問題１　腎臓の働きに関する説明として、誤っているのはどれか。１つ選べ。

a) 血液から老廃物や余分な水分の濾過および排泄を行って尿を生成し、体液の恒常性を維持する。b) 尿素などタンパク質の代謝物を排出する。c) 内分泌や代謝では、ビタミンＤの活性化、エリスロポエチン産生、レニン産生を行う。d) 健常人では、糸球体で１日当たり80g程度のタンパク質が濾過され、その30％は尿細管で再吸収される。

問題２　腎臓の構造や細胞に関する用語の説明として、正しいのはどれか。１つ選べ。

a) ネフロンとは、糸球体とボーマン嚢からなる腎小体のことである。b) メサンギウム細胞は、糸球体の内皮細胞のことである。c) 糸球体係蹄壁とは、糸球体の毛細血管壁のことで、血管内皮細胞、基底膜等からなる。d) 尿細管間質（尿細管と尿細管の間の組織）は酸素消費が少ない部分なので、虚血による低酸素状態が起きても腎不全の形成過程への影響はみられない。

問題３　ネフローゼ症候群について、正しいのはどれか。１つ選べ。

a) 微小変化型は、一次性ネフローゼの約４割を占め、成人のネフローゼの約８割を占める。b) 巣状分節性糸球体硬化症は、高度のタンパク尿を認め、難治性ネフローゼ症候群の代表疾患である。c) 膜性腎症は、糸球体係蹄壁へIgGが沈着する疾患で、小児に多くみられる。d) 膜性増殖性糸球体腎炎は、糸球体係蹄壁の肥厚やメサンギウム細胞の増殖がみられ、発症は30代以下の若年者に多い。予後が非常に良好なのが特徴である。

問題４　ネフローゼ症候群の病態に関する説明として、正しいのはどれか。１つ選べ。

a) ネフローゼ症候群の病態の主要因は、低タンパク血症とそれに基づくタンパク尿の減少である。b) 本疾患の症状として、タンパクの界面活性作用により尿の泡が増大することがある。c) 本疾患でみられる浮腫は、下腿やまぶた等から始まる。全身に広がることはない。d) 低アルブミン血症により肝臓でのアルブミン合成が亢進するが、反対に血液凝固因子の産生は低下する。

問題５　ネフローゼ症候群の治療に関する説明として、誤っているのはどれか。１つ選べ。

a) 免疫反応や炎症を抑制するステロイド薬を中心とした薬物療法が主体となる。b) 薬物治療以外にも安静・食事療法は重要である。c) 食事療法では、タンパク制限は必要とされるが、減塩に関しては高度な浮腫がみられなければ全く必要ない。d) 脂質異常の場合、スタチン製剤が有効であるが、腎機能低下により横紋筋融解症のリスクが上昇するため注意が必要である。

問題６　ネフローゼ症候群の治療に関する説明として、誤っているのはどれか。１つ選べ。

a) 微小変化型ネフローゼ症候群の多くは、ステロイド療法に反応しない。b) 巣状分節性糸球体硬化症では、ステロイド治療による寛解率は30％前後で、改善が見込めない場合は免疫抑制剤を併用する。c) 膜性腎症では、初期治療にステロイドを用い、難治性の場合には免疫抑制剤を併用する。自然寛解することもある。d) 膜性増殖性糸球体腎炎では、ステロイド・免疫抑制剤等が用いられるが、治療法は確立されていない。ステロイドに関しては、小児には有効だが成人には有効性が確立されていない。

問題７　アルブミン製剤について、誤っているのはどれか。１つ選べ。

a) アルブミンの主な作用は血漿膠質浸透圧の維持であり、効果としては循環血漿量の維持や浮腫の軽減である。b) 糸球体へのタンパク負荷を増大させることによりタンパク尿の増加をきたす可能性がある。c) 保存は凍結を避けるも、必ず冷所保存しなければならない。d) 使用する際には有効期限を確認する。

問題８　腎不全に関する説明として、誤っているのはどれか。１つ選べ。

a) 腎機能の低下により体液の恒常性維持ができなくなった状態。b) 腎不全は進行速度から急性と慢性に分けられる。c) 急性腎障害は一般的に可逆的であり、慢性腎臓病に移行することはない。d) 慢性腎臓病は、タンパク尿等の明らかな腎障害、糸球体濾過量の低下のいずれか、または両方が３ヵ月以上持続した状態。

問題９　急性腎障害（AKI）について、誤っているのはどれか。１つ選べ。

a) 障害部位により腎前性、腎後性の２つに大別される。b) 腎血流量が低下するとNaと水分の再吸収が低下して、乏尿が認められる。c) 尿量の減少または血清クレアチニンおよび BUN の低下が認められる場合、AKI が疑われる。d) Ｐ排泄障害では、高Ｐ血症および低 Ca 血症を呈する。

問題10　慢性腎臓病（CKD）について、誤っているのはどれか。１つ選べ。

a) CKD はステージ１から透析に至るステージ４に分類される。b) 透析導入の原疾患では、かつて慢性糸球体腎炎が最も多かったが、糖尿病性腎症が増加している。c) 進行性の不可逆的な GFR の低下をきたし、老廃物の排泄とともに血圧の調節機構等も障害を受ける。d) 糸球体障害が進行するとネフロン数が減少し糸球体高血圧を呈するようになり、糸球体硬化が進行する。

問題11　慢性腎臓病の合併症に関する説明として、誤っているのはどれか。１つ選べ。

a) CKDでは、腎性貧血、心血管病変、骨代謝異常の管理は生命予後に影響を及ぼすため重要である。b) 便秘や皮膚掻痒は、QOLの低下に結びつきやすい。c) 腎機能低下に伴い、腎の尿細管間質でのレニンの産生が減少し腎性貧血が引き起こされる。d) CKD-MBD（CKDに伴う骨ミネラル代謝異常症）は血管の石灰化を引き起こし、透析患者の心不全リスクが高くなる要因となる。

問題12　腎不全の治療に関する説明として、誤っているのはどれか。１つ選べ。

a) 原因疾患の治療と増悪因子の除去が優先され、腎毒性を有する薬物は原則中止される。b) 代謝性アシドーシスに対する重炭酸イオンの投与は、Na 負荷となるため高 Na 血症や浮腫に注意する。c) 炭酸カルシウム投与では、胃内 pH の変動によりＰ吸着能が影響されるため、H2 受容体拮抗薬等との併用による薬効の減弱に注意する。d) CKD においてCKD-MBD は血管が石灰化を引き起こすものの、全身の骨への影響は全く見られないため重要視されない。

問題１　糸球体腎炎および糖尿病性腎症の病態に関する説明として、正しいのはどれか。１つ選べ。

a) 糸球体腎炎では、血尿、タンパク尿、乏尿がみられるが、浮腫はみられない。b) 急性糸球体腎炎の三大症状は、血尿、浮腫、高血糖である。c) 糖尿病性腎症は、長期間の高血糖状態により全身の細小血管が障害され、糸球体が硬化して腎機能が低下する病態である。d) 糖尿病性腎症により、網膜症を発症することはない。

問題２　糸球体腎炎の病態や治療に関する説明として、正しいのはどれか。１つ選べ。

a) 溶連菌感染後糸球体腎炎は、Ａ群 β 溶血性連鎖球菌等による先行感染に引き続いて急速に発症する。b) 溶連菌感染後糸球体腎炎の治療では、ステロイド薬と免疫抑制薬が必ず使用される。c) 半月体形成糸球体腎炎の進行は急速ではなく、腎機能の低下は数年単位でおこる。d) 半月体形成糸球体腎炎の治療でも、原則ステロイド薬や免疫抑制が使用されることはない。

問題３　IgA腎症に関する説明として、正しいものはどれか。１つ選べ。

a) IgA腎症は、二次性で続発性に分類される。b) 成人の治療として、RA 系阻害薬、副腎皮質ステロイド薬等である。c) 免疫抑制薬は、有効ではない。d) 扁桃腺を摘出した後にステロイド薬大量投与で腎臓の炎症を抑える「扁摘パルス療法」は、わが国では行われていない。

問題４　ループス腎炎の病態や治療に関する説明として、誤っているのはどれか。１つ選べ。

a) 自己免疫疾患であるギラン・バレー症候群に合併する腎炎をさす。b) 主な治療薬はステロイド薬と免疫抑制薬である。c) 通常療法に抵抗性を示すケースに対しては、ミコフェノール酸モフェチルやリツキシマブを用いた治療が試みられている。d) 抗リン脂質抗体陽性で血栓症を伴う場合には、アスピリンを併用する

問題５　糸球体腎炎治療薬として用いられる免疫抑制薬について、誤っているのはどれか。１つ選べ。

a) シクロスポリンの作用機序は、主としてＴリンパ球の活性化因子である IL-2 などの産生亢進による免疫抑制作用である。b) シクロフォスファミドは、直接 DNA 合成を抑制することで活性化リンパ球を抑制して強力な免疫抑制作用を示す。c) ミゾリビンは、プリン合成系のイノシン酸からグアニル酸に至る経路を拮抗阻害することで、リンパ球系細胞の増殖を抑制し免疫抑制作用を示す。d) アザチオプリンは生体内で６-メルカプトプリンに代謝され、これがチオイノシン酸となり、イノシン酸と拮抗して核酸合成を抑制する。

問題６　糸球体腎炎治療薬に関する説明として、誤っているのはどれか。１つ選べ。

a) ワルファリンの作用を減弱させるため、ビタミンＫは併用禁忌である。b) ワルファリンの代謝には、CYP2C9が関与するため、これらの阻害薬との併用には十分注意すべきである。c) 抗血小板薬の多くは、消化性潰瘍等の合併症がある患者には禁忌である。d) ARB（アンジオテンシンII拮抗薬）は腎代謝型薬物であるため腎機能低下者に投与できない。

問題７　糖尿病性腎症に関する説明として、正しいのはどれか。１つ選べ。

a) 本疾患の発症は、糖尿病の発症とほぼ同時であることが多い。b) 臨床所見として、初期段階において微量アルブミン尿の出現に先駆けて血清クレアチニン値の上昇と持続性のタンパク尿を呈する。c) 全身の動脈硬化が強い場合には、心臓や脳の血管障害を合併しやすい。d) 糖尿病患者における腎機能低下では、必ずタンパク尿を伴う。

問題８　糖尿病性腎症の治療目標は、腎症の発症・進行を抑制することであり、病期分類に従った治療方針が推進されている。

a) 血糖コントロールは腎症の進行抑制に有効ではない。b) HbA1c は7.2% 未満を目標とし、薬物療法で目標に達しない場合は、食事・運動療法を適宜行う。c) ナテグリニドは重篤な腎機能障害患者にかなり有効である。d) ビグアナイド薬は腎排泄型薬剤であるうえ、腎機能低下時には乳酸アシドーシスを引き起こしやすくなるため、腎不全時には禁忌である。

問題９　糖尿病性腎症の治療における血圧管理に関する説明として、誤っているのはどれか。１つ選べ。

a) 血圧コントロールは腎症の発症・進行抑制に有効である。b) 血圧コントロールの目標は、130/80mmHg未満である。c) 腎症における第一選択薬としては、Ca 拮抗薬である。d) ACE 阻害薬や ARB は、降圧効果だけではなくタンパク尿減少やインスリン感受性改善作用も認められている。

問題10　糖尿病性腎症の非薬物療法の説明として、正しいのはどれか。１つ選べ。

a) 食事療法で、タンパク質摂取量の上限をエネルギー摂取量の20％ 未満とすることが望ましい。b) 高血圧合併の場合の食塩摂取量は１日10ｇ未満が推奨される。c) 微量アルブミン尿を呈する場合、運動後に一時的にタンパク尿が増え、腎症の進行に大きな影響を与えてしまう。d) 本疾患において運動は禁忌である。