薬剤師業務支援講座

会報誌 No.125より

小児医療への薬剤師のかかわり

日時:2023年5月21日(日)13:00 ~ 14:30
形態:Zoomによる遠隔研修会
講師:国立研究開発法人
   国立成育医療研究センター薬剤部
   詫間 梨恵 先生(D-57S 平成21年卒)

 小児医療の薬物療法に関する講演の要望は常に多く寄せられ、要望に沿う形で小児医療の総本山とも言うべき国立成育医療研究センター薬剤部 詫間梨恵氏に講演をお願いいたしました。その講演の概略をご紹介いたします。小児医療における薬剤師業務では小児薬用量を考える必要があり、脱カプセルや粉砕を含め調剤が煩雑で大変といったイメージを持たれるかも知れません。しかしながら、未来ある子ども達の成長を一緒に見守っていけることは大きな喜びとなります。子どもたちや保護者から学んできたこと、これからも増え続ける医療的ケア児に対し、薬剤師としてどのように関わっていけばいいか、現場で感じている薬薬連携の重要性も踏まえてご紹介して頂きました。具体的には国立成育医療研究センターの紹介から始まり、「小児医療を取り巻く環境」「知っておきたい子どもの薬物動態」「薬の飲ませ方」「子どもと保護者への服薬指導」「医療的ケア児と薬薬連携の必要性」と短い時間に必要な事項を上手に解説して頂きました。恵まれた環境にある国立成育医療研究センターならではと感じる事柄もありましたが、全体として大いに参考になりました。

病院薬剤師の現状と未来展望

日時:2023年7月23日(日)13:00 ~ 14:30
形態:Zoomによる遠隔研修会
講師:一般社団法人 日本病院薬剤師会 事務局長
   松久 哲章 先生(D-34A 昭和61年卒)

 日本病院薬剤師会事務局長 松久哲章先生に標題の講演を頂きました。講演内容は多岐に亘りましたので、そ
の一部を簡単に紹介させて頂きます。
 政策医療としては人口動態の高齢化に伴って、地域の特性に応じた地域医療構想が進められています。地域医療構想を円滑に実施するために、薬物治療管理の専門家としての薬剤師が行うべきこととして病院及び薬局間で適切に連携する必要があります。具体的には調剤・製剤、医薬品管理、医薬品情報管理等に加えて患者の薬物治療管理をシームレスに対応できる体制の構築が挙げられます。また、現在の薬剤師の不足や偏在が取り上げられており、2024年度から開始される第8次医療計画には「薬剤師確保策の策定」が明記されました、これにより各都道府県では今後の医療・介護提供について患者視点に立った体制が構築格となり、地域の病院・診療所の医師、看護師に加えて薬剤師も適正数配置の医療計画が要求されるようになります。その結果、適切な病棟薬剤業務の展開が期待され、更に多くの病院間連携、病院・薬局間連携が促進され、それぞれの機関がより一層機能し易くなると考えられます。

会報誌 No.124より

心不全療養指導士と薬薬連携について

日時:2022年10月23日(日)13:00 ~ 14:30
形態:Zoomによる遠隔研修会
講師:日本赤十字社医療センター薬剤部
   薬物治療管理課
   奥津 雄人 先生(D-60 平成24年卒)

 上記の日程で薬剤師業務支援講座が開催されました。今回も Zoom による遠隔形式での研修会となりました。アスヤク life 研修並びに同窓会ホームページからの受講申込を含め、39 名の参加がありました。講演内容は病院サイドからみた薬々連携のお話で、コメディカルや調剤薬局との連携は不可欠あり、演者自身の経験を踏まえ、また、日赤での連携を例に挙げて、お話しいただきました。特に、日本循環器学会策定の心不全ガイドラインに沿った話の展開は分かりやすく感じました。詳しい講演内容につきましては、奥津先生からの【寄稿】本号 4 ページをご覧ください。
 講演内容とは関連しませんが、当日、狛江薬剤師会の方の「Web 研修会」見学者がありました。同会で遠隔研修会を企画しているとのことで参考にしたいとのお話でした。ケーブルが散乱する状況を見て驚かれたと思われますが、「遠隔会議を開催する参考になりました」という有難いお言葉を頂き、研修内容以外で少しお役に立てたのではないかと喜んでおります。

症例に学ぶ漢方薬の応用
〜「血けっきょ虚」と「瘀おけつ血」を中心に〜

日時:2022年11月20日(日)13:00 ~ 14:30
形態:Zoomによる遠隔研修会
講師:漢方のスギヤマ薬局薬剤師
   金井 真純 先生(D-60 平成24年卒)

 金井先生のご講演は 2 回目となります。前回のご講演も好評で漢方に関する関心の高さを痛感しています。今回の講演では症例を中心にお話頂きましたので簡単にご紹介いたします。
 漢方の体質判断の材料として、「気き・血けつ・水すい」の概念があり、これらがどのように失調すると、どんな症状が出るかというこが、なかなか結びつかない・覚えられないという方も多いと推察されます。例えば、“ 婦人科疾患に使う ” と認識されている『当帰芍薬散』などの薬が、婦人科以外で処方された時に、処方解析に戸惑ってしまった経験がおありの方もあると思われます。「気・血・水」の全体像を掴みながら、実際の症例を通して「血」の不足(血虚)や、詰まり(瘀血)について判断することが肝要となります。病名からではなく、体質から漢方薬を考えることにより、服薬指導・処方提案・漢方薬販売の幅が広がると考えられます。実際、紹介された症例のうち、睡眠障害を伴う月経不全から回復した例については、従来の西洋医学的アプローチが無効であったことを踏まえれば、見立ての正確さと漢方治療の面目躍如と言ったところでしょう。

会報誌 No.123より

〈かかりつけ〉を意識した取り組みと在宅業務における現状と課題

日時:2022年5月22日(日)13:00 ~ 14:30
形態:Zoomによる遠隔研修会
講師:株式会社玉屋利兵衛 代表取締役
   安井 浩 先生(D-42Y 平成6年卒)

 2015 年に厚生労働省が公表した「患者のための薬局ビジョン」において、「かかりつけ」としての機能は医薬分業の意義である旨が示されています。またその機能の一つとして在宅医療の対応や地域包括ケアシステムにおける他職種との連携についても明記されています。演者の薬局では日頃から「かかりつけ」として地域住民に選んでいただけることを意識して業務に取り組んでいますが、在宅医療についても患者様の状況に応じて出来るだけ柔軟に対応しています。今回は先生の薬局における「かかりつけ」を意識した取り組みや在宅業務の現状や問題点などについて講演していただきました。なお、患者対応について具体例を知りたいという複数の質問が寄せられ、受講者の関心の高さがうかがわれました。

演者略歴
1994年 昭和薬科大学薬学部薬学科 卒業
埼玉医科大学病院 入職
1997年 株式会社エール薬局 入社
2003年 株式会社ダムファールマ 関西地区エリアマネージャー就任
2005年~  運営副本部長 就任
2006年~ 株式会社メディカルハートランド 運営管理課 課長就任
2007年 株式会社アプロ・ドットコム 入社
 紹介事業部マネージャー及び紹介責任者 就任
2009年 株式会社玉屋利兵衛 創業  代表取締役 就任
2009年~やまのべ駅前調剤薬局 開業
2010年~陵南調剤薬局 開業
2018年~ケアーズ訪問看護リハビリステーション大宮大成 開業
2021年~有料老人ホーム「はなあかり」 開業
 現在に至る

循環器疾患の最新の薬物治療と薬剤師が注意すべきポイント

日時:2022年7月24日(日)13:00 ~ 14:30
形態:Zoomによる遠隔研修会
講師:国立研究開発法人 国立国際医療研究センター
   病院 薬剤部 有山 真由美 先生

 超高齢化社会の日本において、虚血性心疾患や不整脈、心不全をはじめとする循環器疾患の患者数は増加の一途を辿っており、健康長寿を達成するためには循環器疾患の克服が何より重要です。循環器疾患は、薬
物治療が患者の予後や QOL の改善に大きく貢献する事が分かっており、適切な薬物治療を提供するために、薬剤師は治療効果・副作用・相互作用の確認(OTC薬を含む)、ポリファーマシーへの取り組み、服薬ア
ドヒアランスを維持するための支援など、果たすべき役割は多岐に渡ります。また、様々な循環器疾患の終末像である心不全は、近年、ガイドラインの改定や新規作用機序の治療薬の登場により、薬剤師が確認すべ
き事項が増えています。代表的な循環器疾患の最新の薬物治療を 4 つに分類し、薬剤師が注意すべきポイントに焦点をあてて、概説して頂きました。演者のご指摘通り、患者数の増大を反映してか遠隔研修会では最
高の 50 名を超える申込者がありました。

演者略歴
平成21年 帝京大学薬学部薬学科卒業
平成23年 帝京大学大学院薬学研究科臨床研究コース 修了
平成23年 国立国際医療研究センター病院 薬剤師レジデント
平成25年 国立国際医療研究センター病院 薬剤師
 現在に至る
平成29年より病棟薬剤師として循環器病棟を担当、令和2年度より、
HCU病棟(ハイケアユニット)で急性心筋梗塞や重症心不全患者の薬
学管理を担当
<取得資格> 平成29年 スポーツファーマシスト
       令和3年 心不全療養指導士

昭薬同窓会・平成塾は生涯研修認定制度の研修機関(プロバイダー)として、公益社団法人薬剤師認定制度認証機構(Council on Pharmacists Credentials: CPC)より認証されています。従って、研修単位は他の研修機関と互換性があります。また、認定薬剤師の取得も可能です。現在、コロナ禍の影響により認定薬剤師の取得条件は大幅に緩和されていますのでご活用ください。

薬物療法の進歩は著しく、薬剤師は生涯にわたる研鑽が求められています。令和 6 年度新入生より実施されている「薬学教育コアカリキュラム(コアカリ)」では生涯学修への取組みが導入され、医療人として医師・歯科医師・薬剤師に共通の価値観を持つことが求められています。教科書として採用している「薬物治療学改訂 13 版(南山堂)」はこのコアカリに準拠しており、旧版をお持ちの方も本改訂版を精読されることを強くお勧めします。今年度は「神経・筋疾患と神経疾患の薬物療法」と「代謝系の疾患・骨の疾患と薬物療法」を選び、これら疾患の基本的概念と治療薬の把握を目指します。平成塾の通信講座を通じて疾患の基礎的な知識の修得と治療薬の新たな情報収集に役立つことを期待しています。

平成塾では、最新の医療知識とスキルを学び、規定の単位を取得することで認定薬剤師の資格を取得できます。対面授業とオンライン授業の両方を提供し、生涯学習を希望する全ての方が対象です。他学出身者も大歓迎です。年間を通じて通信講座やスクーリングを開催しています。