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2011年 第3回テキスト「膵臓の機能と病気」

巻頭言

今回は膵臓の機能と病気ということで、まとめることになっている。但し、膵臓といえば、誰もがランゲルハンス島=インスリン=糖尿病と考えられることと思うが、今回、この稿では糖尿病は扱わない。糖尿病は別稿で扱うことになっているので、そちらを期待して戴きたい。

そこで本項では、膵臓の役割とは何かに始まり、急性膵炎、慢性膵炎等の膵臓そのものの障害を中心に、紹介する。

東洋医学で言う五臓六腑中の五臓には、膵臓は含まれていなかったとされている。『膵』という文字は、中国から伝承された漢字ではなく、日本の医学者・宇田川玄真(1769-1834)が造語したいわゆる“国字”と称するものであるといわれている。『膵』の『月偏』は当然のごとく肉体の意を持つ『肉月』で、旁の『萃』は、集まるという意味とされている。つまり『分泌物が泉のように湧き出る』という意味で付けたのではないかといわれる。

また、英語のpancreasは、膵臓が全体としてピンク色で、肉の塊のように見えることからpan=全体、kreas=肉というギリシャ語から名付けられたものだとされる。

何れにしろ解剖をすることのなかった昔は、膵臓の存在を確認することが出来なかったということのようである。更に膵臓は一大事になるまで症状がなく『沈黙の臓器』といわれており、東洋医学では見つけられなかったということであり、我が国においても腑分けが行われたことにより初めて膵臓の存在を確認したということである。

どういう訳か、ここに来て漫才師の次長課長、チュートリアルのそれぞれ相方が急性膵炎で入院したというニュースが流れた。二組とも現在人気のあるチームである。仕事が忙しすぎての過労ということも考えられるが、急性膵炎になった方は、どちらも酒好きで知られている。膵炎の原因の一つと2してalcoholがあげられており、多分原因となったのは、酒ではないかと思われるが、毎日呑まなければいられないという酒好きは、注意することが必要である。『沈黙の臓器』といわれるだけに、相当悪化した状況にならなければ、当人は不調に気がつかないということになるのではないか。

急性膵炎の詳細については、急性膵炎診療ガイドライン2010改訂出版委員会・編「第3版急性膵炎診療ガイドライン2010;金原出版株式会社,2009」を、慢性膵炎の詳細については財団法人日本消化器病学会・編「慢性膵炎診療ガイドライン;南江堂,2009」を参照されたい。

2011年3月21日
古泉 秀夫

【目次】

  • I.膵臓の位置と構造   5
  • II.膵臓の組織と機能   6
    • 1.外分泌部   6
    • 2.膵液   7
    • 3.内分泌部(ランゲルハンス島)  8
      • a.膵臓の生理作用   8
      • b.膵臓の内分泌機能   9
  • III.膵臓の疾患   9
    • 1.急性膵炎(acutepancreatitis)  9
      • 1)病因の背景   9
      • 2)病 態   11
      • 3)発症頻度   12
      • 4)臨床症状   12
      • 5)検査所見   13
      • 6)診断のポイント   14
      • 7)治療   15
        • a.輸液   15
        • b.鎮痛薬   16
        • c.抗菌薬   19
        • d.蛋白分解酵素阻害薬   23
        • e.栄養療法   25
        • f.その他   26
      • 8)予後   31
      • 9)胆石性膵炎(gallstone induced acute pancreatitis,gallstone pancreatitis)  31
    • 2.薬剤性急性膵炎(acute pancreatitis、druginduced pancreatitis)  32
    • 3.急性膵炎治療の臨床指標(Pancretitis bundle)  34
    • 4.慢性膵炎(chronic pancreatitis)   35
      • 1)慢性膵炎とは   35
      • 2)病因・病態   38
      • 3)臨床症状   41
      • 4)慢性膵炎の治療   42
      • 代償期の治療薬   42
      • 非代償期の治療薬   45
      • 外科的治療   47
  • IV.自己査定   70
  • V.付録『相互作用による致死的事例』   75
  • VI.索引   79

索引

【0~9】、【A~Z】

  • α-細胞   8
  • acutepancreatitis   9
  • β-細胞   8
  • BT-PABA試験   37
  • bromhexine   54
  • buprenorphine   18
  • camostat   58
  • Cullen徴候   13
  • δ-細胞   8
  • diclofenac   49
  • ERCP   38
  • EUS   38
  • famotidine   27 , 56
  • fl opropion   53
  • glibenclamide   64
  • gliclazide   63
  • Grey-Turner徴候   13
  • imipenem・cilastatin   20
  • indometacin   51
  • insulin human   66
  • insulin human・isophane insulin   67
  • islets of Langerhans   8
  • MOF(multiple organ failure)  10
  • MRCP   38
  • nexus   6
  • omeprazole   29
  • pancreatic juice   7
  • pancreatin   60
  • pentazocine   17
  • PSC   40
  • rabeprazole   61
  • scopolamine   48 , 59
  • sulbactam・cefoperazon   22
  • X線CT検査   14

【あ行】

  • アルコール性慢性膵炎   39
  • インテバン坐薬   51
  • 壊死性膵炎   32
  • エフオーワイ注射用   24
  • エレンタール配合内容剤   25
  • エンシュア・リキッド   25
  • オイグルコン錠   64
  • オメプラール注   29

【か行】

  • 外分泌腺   6
  • ガスター錠   56
  • ガスター注   27
  • カレン徴候   13
  • 急性膵炎   9
  • 急性膵炎診断のポイント   14
  • 急性膵炎治療の臨床指標   34
  • 急性膵炎の検査所見   13
  • 急性膵炎の治療   15
    • 栄養療法   25
    • エフオーワイ注射用   24
    • エレンタール配合内容剤   25
    • エンシュア・リキッド   25
    • 経腸栄養剤   25
    • 抗菌薬   19
    • スルペラゾン静注用   22
    • ソセゴン注   17
    • 蛋白分解酵素阻害薬   23
    • チエナム点滴静注用   20
    • 鎮痛剤   16
    • ツインライン配合経腸用剤   25
    • 乳酸リンゲル液   15
    • ハーモニック-M   25
    • ブドウ糖加アセテートリンゲル液   16
    • 輸液   15
    • レペタン注   18
  • 急性膵炎の発症頻度   12
  • 急性膵炎の予後   31
  • グリミクロン錠   63
  • グレー・ターナー徴候   13
  • 経腸栄養剤   25
  • 原発性硬化性胆管炎   40
  • 抗菌薬   19
  • コスパノン錠   53

【さ行】

  • 索状高エコー   37
  • 消化酵素   7
  • 自己査定   70
  • 自己消化   11
  • 自己免疫性膵炎   40
  • 自己免疫性膵炎臨床診断基準   41
  • 出血壊死性膵炎   11
  • 腫瘤形成性膵炎   40
  • 膵液   7
  • 膵管辺縁高エコー   37
  • 膵臓の位置と構造   5
  • 膵臓の生理作用   8
  • 膵臓の組織と機能   6
  • 膵臓の内分泌機能   9
  • 膵島   6
  • 膵島ホルモン   6
  • スルペラゾン静注用   22
  • 腺房   6
  • 早期慢性膵炎の画像所見   37
  • 相互作用による致死的事例   75
  • ソセゴン注   17

【た行】

  • 多臓器不全   10
  • 胆石合併慢性膵炎   39
  • 胆石性膵炎   31
  • 蛋白分解酵素阻害薬   23
  • チエナム点滴静注用   20
  • チモーゲン顆粒   6
  • 鎮痛剤   16
  • ツインライン配合経腸用剤   25
  • 点状高エコー   37
  • 導管   6
  • 特発性慢性膵炎   39

【な行】

  • 内分泌腺組織   6
  • 乳酸リンゲル液   15
  • 嚢胞   37

【は行】

  • ハーモニック-M   25
  • パリエット錠   61
  • パンクレアチン   60
  • ビソルボン錠   54
  • フォイパン錠   58
  • 不活性型   10
  • 腹部超音波検査   14
  • 浮腫性膵炎   11 , 32
  • ブスコパン注   48 , 59
  • ブドウ糖加アセテートリンゲル液   16
  • 不連続な分葉エコー   37
  • 分枝膵管拡張   37
  • ベリチーム配合顆粒   55
  • ペンフィルR注   66
  • ペンフィル30R注   67
  • 蜂巣状分葉エコー   37
  • ボルタレンサポ   49

【ま行】

  • 慢性膵炎とは   35
  • 慢性膵炎の診断項目   37
  • 慢性膵炎の治療   42
    • インテバン坐薬   51
    • オイグルコン錠   64
    • ガスター錠   56
    • 間歇期の治療   43
      • 膵液欝滞に対する処置   44
      • 膵炎の増悪・進展防止と薬物療法   44
      • 比較的軽度の慢性膵炎   44
    • グリミクロン錠   63
    • 外科的治療   47
    • コスパノン錠   53
    • 再燃時の治療   42
      • 急性発作   42
      • 激しい疼痛時   43
    • パリエット錠   61
    • パンクレアチン   60
    • ビソルボン錠   54
    • 非代償期   45
      • 消化吸収障害   45
      • 糖尿病   46
    • フォイパン錠   58
    • ブスコパン注   48 , 59
    • ベリチーム配合顆粒   55
    • ペンフィルR注   66
    • ペンフィル30R注   67
    • ボルタレンサポ   49
  • 慢性膵炎の定義と分類   35
  • 慢性膵炎の病因・病態   38
  • 慢性膵炎の臨床症状   41
  • 慢性膵炎臨床診断基準   36
  • 鳩尾(みぞおち)  12

【や行】

  • 薬剤性急性膵炎   32
  • 薬剤性膵炎の発症機序   33
  • 薬剤による急性膵炎   33
  • 輸液   15

【ら行】

  • ランゲルハンス島   6 , 8
  • レペタン注   18

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